• お知らせ

お知らせ

禅定(ぜんじょう)

 今一世(いっせい)を風靡(ふうび)しているアニメ「鬼滅の刃」に「全集中の呼吸」という場面があります。作者の吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)さんが女性で武道の「呼吸法」に精通されているのには少し驚かされました。心が動揺することなく集中するためには何を身に着ければいいのでしょう。また、武道では力をいかに抜くかが大切です。力を入れて相手と対するよりもむしろどこで力をいかに抜くことの方が難しいと考えます。では、いかにリラックスするにはどうすればいいのでしょう。集中力とリラックスすることを身に着けることは、現代人に取って必要不可欠になっているのではないでしょうか。

 仏教においては、煩悩(度を越えた業と欲)に縛られていることから解放され、迷いの世界、輪廻などの苦を脱して「自由の境地」に到達することを「解脱(げだつ)」と言います。六波羅蜜の六つの菩薩行の中で「解脱」に相当するのが「禅定(ぜんじょう)」と「智慧(ちえ)」です。
 「禅定」の実践とは、「通常時にひとつの対象に定まっていない心を、ひとつの対象に完全に集中することである」と説きます。「鬼滅の刃」で言うところの「全集中」でしょうか。この集中力とリラックスすることを同時に身に着けるのに有効で具体的な方法が「瞑想法」です。

    スマホを開発し世界を変えたスティーブ・ジョブズ氏は、般若心経(英訳ではHeart  Sutra ハート  スートラ)を学び、唱え、そして瞑想の実践をするために何度も日本にやってきました。彼が日本の仏教の教え(般若心経・禅定)を信仰の対象としていたのは有名な話です。また、アメリカ、ヨーロッパの学校では、毎日始業前に瞑想を15~30分取り入れた結果、授業に対する集中、理解度が高くなり学力、進学実績が飛躍的に上がったといった報告がたくさん見受けられます。“日本は”と言うと、今や宝(仏教の教え)の持ち腐れ状態を強いられている国と言っても過言ではありません。一部のスポーツ選手の間では競技前に瞑想を取り入れている選手もいるようですが。

 私は、本山での修行中3か月くらい経ってようやく「これが瞑想の状態か」という心境に到達することが可能になりました。初めは苦痛でしかなかった修行ですが、毎日お経を唱える中で、「呼吸法」が身につき始めると長時間の正座で足が痛いにも関わらず、いつの間にか頭の中が非常に安定したリラックスした状態になり幸福感に満たされる感覚(頭の中に溜まったゴミが綺麗に掃除され爽やかな気持ちになるとでも言ったところでしょうか)になりました。これが現代医学で俗に言う神経伝達物質の一つである”セロトニン“が脳の中で多く分泌されている状態であると知ることになります。今では、理趣経(りしゅきょう)という長いお経でなくても短い般若心経でも瞑想状態に持っていくことができるようになりました。瞑想状態では自然と背筋が伸ばされ(全身の血流がよくなり)、集中とリラックスの合わさった心の安定した至福の状態が保たれます。ポイントは、腹式呼吸による「呼吸」にあります。お経を唱える際には少しずつ長く息を吐き続け、大きく吸う。これが繰り返されます。ちなみに比較的大きな声が出ているのですが、口の前にロウソクを置いても炎が揺れることはありません。まさに「全集中の呼吸」の状態です。(三重県内で腹式呼吸でお経を唱えることのできる僧侶は、残念ながら非常に少ないと思われますが・・・)もちろんお経には、たくさんの有り難い教えが説かれているわけですが、瞑想状態になることができるかの一番のポイントは、無理なく自然に「腹式呼吸」を続けることができるかで決まると言ってもいいでしょう。

    「解脱」「禅定」の教え、「瞑想法」の実践から「集中すること」と「リラックスすること」を体得することにより、何事にも代えがたい貴重な時間を過ごすことができると確信します。合掌

TVアニメ鬼滅の刃「全集中展」公式サイト

TVアニメ鬼滅の刃「全集中展」公式サイト

「鬼滅の刃」全集中の呼吸

お知らせ一覧へ