様々なストレス、悩みが、現代を生きる人々に襲い掛かっていると言っても過言ではありません。その原因は、人間関係、孤独感、あるいは過去に起こったことに対する執着・将来に対する不安、物欲など様々です。そして、これらのことが引き金となり、取り返しのつかない状況に陥ってしまうことが多々あります。このようなストレスに苛まれたとき、気付かない内に呼吸は乱れ浅い状態にあると思われます。
日頃私たちは、呼吸をする際意識してすることはありません。自然に任せて息を吸い、そして吐くという行為が行われています。しかし、呼吸法の基本は、ゆっくり息を吐くところにあります。これをしばらく続けると浅い呼吸から深い呼吸へと変わります。これは、厳しい修行を終えた僧侶が、お経を唱えるときに自然に身につけている状態の一つでもあります。
合気道の稽古においても、稽古の前後に座技(ざぎ)呼吸法の稽古を行います。相手の力を感じながら激しい動きの稽古に入るための準備をし、最後にもう一度呼吸を整えます。息を吐きながら力を入れたり、体を動かすことは、様々なスポーツに共通するところです。
呼吸法は、身体の機能を向上させ、心の働きを活発化させ、心に落ち着きをもたらすと言われます。空海が若き折、室戸岬で行った求聞持法(ぐもんじほう)【真言を百万遍唱え、無限の智慧を手に入れる準備をする】による修行は、取りも直さず呼吸法が基本になっていると考えられます。
呼吸法を身に着けると、セロトニン神経が活発に働くこともすでに多くの研究で明らかになっています。セロトニンとは、精神の安定をもたらす脳内物質で、この物質が脳内に多く分泌されると平常心が保たれ、幸福感が得られる状態になります。
まずは、一日の決まった時間に、ゆっくりと息を吐くことから始められることをお勧め致します。
合掌