• お知らせ

お知らせ

運慶作と伝わる府南寺の金剛力士像(国指定重要文化財)

 府南寺の仁王門(におうもん)(南門)には、国の重要文化財に指定されている金剛力士像(高さ約2.1m)が安置されている。三重県内で、国の重文に指定されている金剛力士像を有する寺院は、府南寺だけである。  

 この2体の金剛力士像は、鎌倉時代の運慶の真作(国立国会図書館デジタルコレクション貯蔵 伊勢国府泰平山府南寺誌 久米令温著 1920年大正9年3月10日発刊)と伝えられ、本尊(国府阿弥陀如来、国府千手観世音菩薩)の守護神(しゅごしん)である。その特徴は、写実的で隆々たる筋肉、豪快で颯爽(さっそう)と気迫に満ちあふれ、玉眼(ぎょくがん)(目に水晶がはめ込んである)で寄木造り(よせぎづくり)の技法をとっている。

 教科書等にも記載のある東大寺南大門の国宝・金剛力士像(高さ約8.4m)と型が同じである。この型(手に印を結んでいる)をとる金剛力士像は、全国に数多存在する金剛力士像の中でも東大寺と府南寺の金剛力士像だけである。

 向かって左側に立ち、右手に金剛杵(こんごうしょ)を持ち、左手は体の前で施無畏(せむい)印を作り、口を開け宇宙の始まりを表す阿形(あぎょう)像は、東大寺の阿形像と全く同じである。一方、向かって右側には、左手に宝棒(ほうぼう)を持ち、右手は説法(せっぽう)印の形を作り、口を閉じ宇宙の完成を表す吽形(うんぎょう)像が配置されている。東大寺の吽形像と異なる点は、府南寺の吽形像は右腕を大きく上にあげている点にあるが、右足のつま先を上げている点は、東大寺同様非常に注目すべき点であり、他の金剛力士像には見られない。また、他の寺院の金剛力士像とは、左右(阿吽)の配置が逆になっている点にも注目したい。

 大きさは異なるが、全国に数多存在する金剛力士像の中で東大寺のものとこれほど似た金剛力士像が800年も前からなぜ府南寺(鈴鹿の国府の里:伊勢国府の国)にだけ存在するのか非常に不思議である。これは、聖徳太子が開基と伝わる伊勢国府の国の本尊(国府阿弥陀如来、国府千手観世音菩薩、両方とも秘仏であり50年に一度開帳が許されている)の1400年以上もの歴史が紡ぐご縁からくるものであろうか。合掌

宝物庫を兼ね備えた仁王門(南門)

お知らせ一覧へ