皆様は、「氏神」についてはよくご存知かと思います。
その土地の「氏神」を祭る神社の境内には鎮守の森があり、ご神木があるところなどもあります。お社があり、「神道」の立場から地域の繁栄を願い、日本文化の中に深く根付いてきました。ちなみに府南寺境内の西側には、神仏習合の流れをくむ飛龍権現をお祭りする鎮守社があります。
それでは、「氏仏(うじぶつ)」についてはいかがでしょう。初めてお聞きになるという方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
府南寺の千手観世音菩薩は、伊勢国府(いせこう)の国(現在の亀山市~鈴鹿市~四日市市南部)の「氏仏」として、この地域をお守りし、民衆の安寧と子孫繁栄、五穀豊穣をもたらし、仏教を篤く信仰する民衆の拠りどころとなり、永い歴史を刻んでまいりました。
府南寺の本堂(観音堂)正面右に、次の墨書があります。
「聖徳太子御真作 国府氏仏 観世音菩薩」
これは、「聖徳太子が自ら刻まれた、伊勢国府の国の地を鎮護し、民衆の安寧を願う観世音菩薩」という意味になります。
1400年を超える永い歴史の中で、伊勢国府の国の政治、経済、文化、教育の中心となり建立された府南寺の千手観世音菩薩は、「氏仏」として時代を照らし続け、地域の人々を見守り、地域の人々から尊崇、敬愛の念をもって、篤く信仰されてきました。これからも地域とともにあり、信仰が受け継がれ、泰平な世の中が続きますことを心よりお祈り申し上げます。 合掌