変異型のコロナウィルスが益々猛威を振るう状態になって参りました。くれぐれもご自愛ください。打って変わり私にとりましては、早朝から小鳥のさえずりが耳に入り毎日の朝のお勤めが心地よい季節になって参りました。ついつい観音様との対話(瞑想)に時間を忘れてしまいます。このような時期だからこそ、世の中が正しい方向に導かれるよう僧侶は、いつもよりしっかりお勤めをしたいものです。
私が津高校で化学の教師として勤めていた十数年前の教え子が著書「インプロがひらく〈老い〉の創造性」を送ってくれました。その教え子は、園部友里恵さんと言いますが、現在三重大学大学院教育学研究科で准教授として教鞭をとっています。“老い”というテーマは、仏教では、お釈迦様が初転法輪(しょてんぽうりん;初めて人々に説いた教え)で四諦(したい)を説き、その中で苦諦(くたい)として四苦八苦(しくはっく)の中に老(ろう)が説かれています。園部さんの実践であるインプロ(即興演劇)では、様々な角度から高齢者の創造性を育む取り組みが紹介されています。東京大学大学院時代の卒業研究論文としてそれまでに培った経験を様々な身体的・認知的症状の高齢者たちにも焦点を当て演劇的手法を用いた実践内容です。受講者の忌憚のない感想、意見が記載されており単なる高齢者のための健康啓発本ではありません。
私は、“老い”は“生”を授かったものであれば避けては通ることのできない、受け入れなければならない自然の摂理として認識しておりますが、その途中の過程では様々なアプローチがあればある程有意義なものとなると考えます。“老い”をこれから本格的に迎えると意識される方、そうした人と関わっておられる方、一読されてみてはいかがでしょうか。合掌