アイナシの花が満開を迎えようとしています。病害虫に侵され、年々ダイナミックさがなくなりつつありますが、新たに若い枝が伸びておりますので回復の兆しも見えます。アイナシは、東海地方の一部にしか生育しない自生種のイヌナシと栽培種のナシとが合わさった自然交配種(偶然の産物)であり,その種子は、ほとんど発芽生育しないとされており,植物学上非常に珍しく貴重なものです。
府南寺のアイナシは、江戸時代はすでに1本の大樹でしたが,明治の中頃に一部の信仰心のない愚かな村人により伐採の危機に会ったと伝えられています。当時の住職らがその貴重さに気づき人災、天災から守り抜き、現在は根元から5本の幹が伸び、非常に珍しい状態で高さ10メートル以上に達しています。樹齢300年以上と考えられ、昭和47年4月1日に県の天然記念物に指定されました。
お寺に咲く幾多の危機を乗り越えた歴史ある天然樹木の花です。観光の目的で人工的に植樹された木ではございません。府南寺のアイナシの花は、長い年月が織りなす「自然の恵み・ご縁」かと思われます。
まだまだコロナウィルスの影響が拭えません。お花見だけでなく、「今」生きていられることに感謝し、お越しの際は本尊(国府阿弥陀如来、国府千手観世音菩薩)に手を合わせていただきましたら幸いに存じます。その際、般若心経、阿弥陀如来の真言(おん あみりた ていぜい からうん)、千手観世音菩薩の真言(おん ばざら たらま きりく)を唱えていただければなお一層心が穏やかになられることでしょう。残念ながら、老若男女問わず、「生かされている」ことに感謝して手を合わせる習慣のなくなりつつある日本という国ですが、静かに心を整えていただく機会を持っていただければ幸いに存じます。。合掌
なお、アイナシの花が咲く時期になると電話での問い合わせをされる方がお見えになります。法務に支障を及ぼす場合がございますので、どうかお電話での問い合わせはご遠慮ください。
令和4年4月2日(土)中日新聞 鈴鹿・亀山版