利益を何と読まれましたか?
利益(りえき)は、一般的には「利得、もうけ、益になること」を意味し商業的な用語として用いられます。ところが、利益の前に尊敬、敬意を表す接頭語の「御(ご)」を付けると(ごりえき)ではなく(ごりやく)と読み、仏教用語としての「功徳(くどく)」と同じ意味合いとなります。果たして「利益」を(りやく)と読み、その意味合いを理解している日本人はどれ程いるでしょうか。
利益(りえき)を求めることは、決して間違いではありません。ところが、予め自分本位な利益(りえき)の多少を計算し、それに見合う形で行動を加減したり、出し惜しみをしたりするのが人間の煩悩(ぼんのう)というものです。度を越えた損得勘定の“ものさし”でしか物事が考えられず利益(りえき)のみを追求すると、得られるはずの利益(りえき)すら得られず、仮に利益(りえき)を得ることができたとしても、その行為によって幸福感を感じることはなく、決して長続きすることはありません。何事に対しても見返りを求めることが常習化している人は、いくら形だけのボランティア活動、奉仕活動に参加しても充実感は得られません。それどころか他者に迷惑をかけることになりかねません。
ご利益(りやく)とは、日頃から積極的な善行(六波羅蜜の菩薩行)を積むことにより神、仏あるいは大自然が、日常の中で私たちに幾多の恵みを授け、その恵みによって私たちは生かされ、幸福がもたらされるということです。決して一過性のお願いごとによりもたらされるものではありません。このことは、遺骨の礼拝を通してお釈迦さまの本質を説く舎利礼文(しゃりらいもん)のお経の中でも説かれています。
以仏神力(いぶつじんりき)・・・仏の神力を以て
利益衆生(りやくしゅじょう)・・・衆生を利益し
発菩提心(ほつぼだいしん)・・・菩提心を発す
日頃から、お互いに物を与え合い、優しい言葉で声をかけ合い、人に役立つことを行い合い、共に喜び共に悲しむ暮らしを大切にし、同じ漢字で表す利益(りえき)と(りやく)の区別がつく日本人でありたいものです。
利益のみを求める心から ご利益は授からず。 合掌