当山は、聖徳太子(574~622)の開創(物部守屋討伐のため皇大神宮への戦勝祈願地)と伝えられ、推古天皇(554~628)の勅願所となり、その後行基(668~749)により修栄され聖武天皇(701~756)の勅願所にもなる。
弘法大師(774~835)が諸国巡錫の折りに当山に立ち寄り本尊に感嘆し、それ以降真言の教えを受け継ぐ寺院となる。天正の兵災後、泰平山無量寿寺(本尊は国府阿弥陀如来)と補陀落山府南寺(本尊は国府千手観世音菩薩)が合併して泰平山府南寺となる。
本尊の2体は、「伊勢国府の国」の氏仏として1400年の歴史を有する秘仏(50年に1度開帳される)である。本尊を守護する金剛力士像は、運慶作と伝えられ国の重要文化財に指定されている。
真言宗御室派の準別格本山、寺格は二等格院として今日に至る。
県の天然記念物に指定されているアイナシの木が春には真っ白な花を咲かせる。
国府学校(現在の鈴鹿市立国府小学校)が明治8年11月8日府南寺の庫裡を借用し、開設される。このときの在籍生徒は男子66名、女子33名であった。以降国府小学校の創立記念日は11月8日と定められている。
泰平山無量寿寺は、聖徳太子が物部守屋を討つに際して皇大神宮へ戦勝を祈願のおり、神託を受けて創建したと伝えています。のち、聖武天皇の勅願所となり、天皇の意を受けた行基により修営されました。弘仁年間(810~24)弘法大師が諸国巡錫の折りに当寺に立ち寄り、本尊阿弥陀仏の霊威に感嘆して17日間の大供養会を行い、その模様は「道俗男女の参籠群集するもの雲霞の如く盛んであった」といわれています。
鎌倉中期、後宇多天皇の頃(1274~96)奈良西大寺の覚乗上人が、一百カ日を期して伊勢神宮に参籠し「吾れ願くば大神宮の内証を窺ひ奉らん」と祈願しました。そして99夜に至り上人の夢に現れた大神は「明くるを待ちて二見浦に来たれ。我が相を見せしむ可し」との託宣を下されました。翌未明、上人が二見浦に赴くと、水面に長さ一丈余りの金色の蛇が現れたため、上人は「濁世末代の衆生は恐れて信心を生じ難し」と告げ、着ていた竹布の袈裟を脱いで蛇に投げかけると、蛇は水中に没しました。
改めて上人は神宮に参籠して祈念しますと、17日満願の夜半に空中から「是より北に当たりて国府の里に一宇あり、泰平山無量寿寺と号す。此に安置する所の弥陀三尊こそ我が内証の変現なり。此の像を拝すれば則ち我れを拝するのである」とのお告げがありました。
無量寿寺へ出かけた上人は、山主良範法印と共に大衆を請じて大般若会を厳修し、秘仏の扉を開け如来を拝しますと、二見浦で霊蛇に掛けた竹布の袈裟が仏の肩を覆っていました。由来を聞いた一同は、この阿弥陀仏のことを天照大神の姿を現す唯一の像(本地仏)として感得し、厚く信仰しました。広く世間に喧伝された「国府の阿弥陀」の由来です。
ご詠歌
ただ頼め よろづの罪は深くとも わが本願のあらんかぎりは
弥陀頼む 人を空しくなすならば われこの国の神と言はれじ
補陀落山府南寺の本尊は「国府の観音」とも「上寺の観音」とも称されている千手観世音菩薩です。左右の脇立には上品の毘沙門天王と勝軍地蔵尊とが奉安されています。
当寺も泰平山無量寺と共に聖徳太子の創建に係るといわれています。聖徳太子は仏法を広めるにあたり、意見の分かれた物部守屋の降伏を、皇大神宮へ祈願し「仏法を興隆せんと思わば、まず当国に一宇の伽藍を建立し、専ら祈念致すべし」との霊告を得ました。
太子が伊勢国を巡遊し、この地に至ったとき、雨宝童子の「汝を待てり。この南の山は観音有縁の地にして、ここに千手観世音菩薩像を奉安すれば、諸願は成就すること疑いなし」との神託を得、直ちに霊木を求めて高さ1丈3尺の千手観世音菩薩を刻み、七堂伽藍を建立して安置しました。山号は観音浄土の名、補陀落山から名付け、また、この地の北に国府があり、府の南に在ることから府南寺を寺号としたといわれています。さらに太子は当山守護の鎮守として飛龍権現摩利支天を奉安して、士卒全てに勝軍厄除の観音の守りを授与し、物部守屋との戦さに勝利しました。これによって推古天皇の勅願所となりました。
なお、境内の池泉を天人影向ケ池または観音池と称し、また、観音堂前には聖徳太子お手植えの松があり、岸の松といっていました。
本尊は治病・除厄・開運・安産、さらに古くは養蚕に霊験が顕かと伝え、遠近から多くの参詣者が集います。
補陀落山府南寺ご詠歌(花山法皇)
いろづくや 上寺山の 岸の松 風の音して 穐(あき)を知らせむ
山号
泰平山
寺院名
府南寺
宗派
真言宗御室派
本尊
国府阿弥陀如来【秘仏】、国府千手観世音菩薩【秘仏】
創建
聖徳太子
創建年
飛鳥時代(574年 – 622年)
札所等
三重四国八十八箇所 21番札所(弘法大師の縁日は21日)
伊勢西国三十三所観音霊場 18番札所(観音菩薩の縁日は18日)
所在地
三重県鈴鹿市国府町2548
TEL
059-378-0539
①仁王門(南門) | 金剛力士像 国指定重要文化財 運慶作(府南寺誌) |
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②鐘楼堂 | |
③補陀落山府南寺本堂(観音堂 |
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④鎮守社 | 飛龍権現 本地摩利支天 |
⑤泰平山無量寿寺本堂(阿弥陀堂) |
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⑥府南寺保存会事務所 | |
⑦境内庭 | |
⑧東門 | 石仏奉納 |
⑨アイナシ | 県指定天然記念物 3月下旬~4月上旬開花 |
最寄駅
平田町駅
バス(平田町駅から)
車(亀山鈴鹿線 県道41号)