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真如(しんにょ)外(ほか)に非(あら)ず

 未だに終息を迎える気配のない新型コロナウィルスですが、いかがお過ごしでしょうか。くれぐれもご自愛ください。
 弘法大師は、約1200年前に「般若心経秘鍵(はんにゃしんぎょうひけん)」の中で次のように書いておられます。

それ仏法は遥(はる)かに非(あら)ず。

心中(しんちゅう)にして即(すなわち)ち近し。

真如(しんにょ)外(ほか)に非(あら)ず。

身を棄(す)てて何(いずく)にか求めん。

 

仏の教えは、はるか遠くにあるわけではない。

自らの心の中にあって、ごく近いものである。

真理は外の世界にあるわけではない。

自分自身の心以外のどこに求めようというのか。

 仏法を説くということは、人の幸せを説くことですが、幸せかどうかを決めるのは他の誰でもなく自分であるというのです。すなわち、大切にしなければならないことは身近なところにあり、自分自身が気が付かないだけで、幸せを遠い外の世界に求めるのではなく、幸せは自分の心のあり方にすでに内蔵されているというのです。 

 質素な暮らしぶりから「世界で一番貧しい大統領」と呼ばれたウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカ氏が高齢のため昨年政界を引退しました。ムヒカ氏は、2012年にリオで開かれた国連の持続可能な開発会議の演説の中で

「人類は、消費社会にコントロールされている」

「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人」と訴えました。

 ムヒカ氏は、給与の9割を福祉に寄付(布施)し副大統領を務めた妻のルシア・トポランスキーさんと郊外の質素な家に住み続け(精進)、畑仕事をしながら大統領という職務を全うしました。ムヒカ氏は仏教徒ではありませんが、その思想・言動はまさに仏道に通じるところがあります。日本の多くの僧侶は袈裟と衣を正さなければなりません。また2016年に日本を訪れた際、広島訪問に先立った東京外大での講演の中で

「人生で一番大切なのは愛であるのに、新しい物、いい物を買うために愛情を浪費している」

「民主主義には限界がある。それでも社会をよくするために闘わなければならない」と学生達に語りかけました。その場限りの欲に振り回されて、本当に大切にしなければならないことを見失ってはいないか。「真如(しんにょ)外(ほか)に非(あら)ず」です。

 なぜムヒカ氏の言葉が多くの日本人の心に響いたのでしょう。しがらみだらけで自身の利害関係を重視した行動しかできない平和ボケした日本の政治家の中で、これほど人として大切なことを素直に語ることができ、行動できる政治家は何人いるでしょう。仏教では人を比較するのはよくないことです。ましてムヒカ氏と比較するのは今の日本社会では酷ではあると思いますが、多くの日本人はムヒカ氏のような政治家を求めているのではないのでしょうか。
 新しい年が皆様にとって希望の持てる明るい年になりますように。合掌


【光明真言】
 おん あぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まに はんどま じんばら はりばりたや うん 

ウルグアイの元大統領 ホセ・ムヒカ氏

世界一貧しい大統領と呼ばれた男 ムヒカさんの幸福論 | ムヒカ, モンテ ...シリーズ:先人たちの書ー空海② | 書家 龍和 -Ryowa- 公式サイト

アネモネ

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